何年も前….どころか、もはや、何十年も前の話だが、ある、休みの日に、丸一日、音楽の録音をして、過ごした事がある。本当に、言葉通り、丸一日。朝、起きた時から、夜になって、眠りに就く時まで、ずっと。その頃は、友人から譲り受けた、多重録音ができる機械があったし、ドラムスだけはなかったものの、ベース・ギター、アコースティック・ギター、ポータブルのシンセ・キーボード/オルガン、そして、ハーモニカが、揃っていた。それらを、全部、代わりがわり、ひとりで演奏して、歌も入れ、コーラスも、ひとりで、何度も、別のパートを歌って、重ねていった。
これが、メチャクチャ、楽しかったので、今でも、覚えている。
一曲目は、ポール・マッカートニーの、“My Love”に、チャレンジした。はじめに来る、持続する一音を、安価なシンセ・キーボードで、工夫して、精一杯、それっぽく演奏して、録音した。あとで、そのパートを聴いて見たら、鳥の鳴き声が、飛び入り参加で、入っていた(笑)。ビートルズの”You’re Going To Lose That Girl”も、やった。これは、コーラスを先に録音してから、リード・ヴォーカルを入れた。歌のメロディーを歌うあとから、ちゃんとコーラスがバック・アップしてくれるのが、無性にうれしくて、楽しくて、仕方がなかった、その幸せな気持ちが、何十年も経った今でも、イキイキと、よみがえる。
その二曲以外には、その日に、何の曲に、チャレンジしたのか。それは、忘れてしまった。なにぶんにも、その多重録音機を使って録音した曲は、無数にあって、歌い、演奏をして、それを多重録音したのは、その日だけでは、全然なかったので。ちなみに、その機械を使って、ポピュラーな曲では、どんな曲の多重録音にチャレンジしたかというと……….
No Reply
I’m Looking Through You
I will
I’ll Get You
I Should Have Known Better
Misery
If I fell
Any Time At All
(以上、すべて、ビートルズ)
Oh My Love
Starting Over
Watching The Wheels
Woman
Beautiful Boy
(以上、すべて、ジョン・レノン)
People Are Strange
(ドアーズ)
To Love Somebody
(ビー・ジーズ)
Fat Bottomed Girls
(クイーン)
The Most Peculiar Man
(サイモン&ガーファンクル)
以上の他にも、多重録音でチャレンジしたポピュラー曲は多く、さらに、多くのオリジナル曲も録音したのに加えて、インストゥルメンタル(演奏だけの)録音も多数あり、列挙していくと、きりがないので、この辺にして置くが、その、多重録音が、最高に楽しかったのが、この一日だったと思う。
この日については、本当に、音の事だけしか、覚えていない。起きた、その時から、ひたすら、音だけを意識して、過ごしていたからだ。プライヴェート録音スタジオになった、間借りして暮らしていた部屋の、外の様子などは、この一日については、明るかったのが、暗くなった…とだけ、覚えている。もちろん、誰にも会っていないし、誰とも話していない。食事の事などは、一体、どうしていたのだろうか。全く、記憶にない。この日は、一日の全部が、音だけで、出来ていた。若き、非職業的ミュージシャンの、青春の1ページでは、あった。おしまい。
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