Waves – Blancmange.
イギリスの、シンセサイザー・デュオ、Blancmange (ブラマンジェ)の、「Waves (波)」という歌には、特別な、思い入れがある。
つらい、つらい、つらい毎日を、過ごしていた頃だった。日々、喜びなく、未来にも、何の希望も、なかった。ただ、惰性で、機械的に、無気力に、どうにか、生きながらえているだけだった。いわゆる、エリート家庭のエゴに、押しつぶされて、もはや、一個人、ひとりの人間としての、尊厳とか、まともな、喜怒哀楽などは、失ってしまっていた。そんな、ある日に、何となく、テレビ神奈川の、洋楽ヴィデオ・クリップを、紹介する番組を、観ていた。観ていただけではなくて、その日は、たまたま、その、テレビ音声を、録音まで、していた。時は、80年代の、前期。余り、感じるところもない、歌と、ヴィデオ・クリップが、次から、次へと、紹介されていく中で、ひたすら、いい歌、好きになれる歌、心に響く、素晴らしい歌を、待っていたら、かかったのが、前述の、Blancmangeの歌、「Waves 」だった。この歌は、本当に、心に響いた。ヴィデオ・クリップも、良かった。海に面した、灯台の前に立ち、さかまく波に向かって、タクトを振る、燕尾服の、指揮者の姿が、深く、印象に残った。録音した、テレビ音声から、その歌を紹介する、言葉を聴き取り、その、聴き取った曲名、アーティスト名を頼りに、下北沢の、中古レコード屋に行って、目当ての歌が収められた、同アーティストのLPを買って、家に帰り、聴いた。それからも、相変わらずの、つらい、つらい、つらい日々が続いたが、その歌を聴いている時は、心が、安らいだ。
その、死ぬほどに、つらい毎日の中で、心の安らぎになる歌や、楽曲が、全部で、十曲位は(多分)、あったのだが、その中で、今も、心に響くのは、この歌だけだ。自分にして見れば、これほどの、名曲が、たいした、知名度も、評判も得ないでいるのは、不思議で、不思議で、仕方がない。これは、明らかに、例えば、「My Way」とか、「Yesterday」、「Bridge Over Troubled Water」の様な、スタンダード曲とされる、数々の歌曲と、並ぶ名曲なのだ。自分にとっては、誇張なしに、そうなのだ。
今、こうして、この歌の事を、文章に書いているだけでも、胸が、詰まり、涙腺が、ゆるむ。好きな歌は、何千曲と、あっても、そんな歌は、この歌以外には、ない。
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